【短歌12首連作】パラレルお盆

神乃

【短歌12首連作】パラレルお盆

2024年夏「夏の畳と短歌賞」平出奔賞受賞作(ミニ畳をいただきました!)

茹でてから多いと気づくそうめんを冷やして一人の夏が始まる

僕は僕の髪の長さに驚いた。小説だったら床屋へ行った。

百円のトマト食べ食べ楽園は“もう戻れない”の部分が光る

積乱雲 僕が洗うまでキッチンに積み重なってく僕の痕跡

夏風邪を馬鹿だからひく ばあちゃんのできない大学進学をして

幼少期の記憶をなぞると体液が溢れて海になりたがってる

枇杷のこと静かに聞けばばぁちゃんのいない実家に天使が通る

親戚の冗談まみれの仏間からパラレルお盆の僕が睨んだ

あの家を実家と呼べば交通費分の遠さにデフォルメされる

大学の誰も知らない記憶からポカリは神輿のおわりの匂い

贖罪のようにお皿を洗ったら明日の僕をシャワーで洗う

フィクションの雨にしかない光り方寝ても覚めても冷めかけの熱